日記

バックナンバー

[先月] [目次] [来月] [最新版] [トップ]

2012年4月27日(金) 協会だより

ニュースレター
平成24年4月・第12号
〜日本のヘレン・ケラーを支援する会〜
社会福祉法人全国盲ろう者協会


福島理事が怒りの発言
総合福祉法をめぐって
〜第19回障がい者制度改革推進会議総合福祉部会〜
 去る2012年2月8日に開催されました第19回障がい者制度改革推進会議総合福祉部会において、新しい障害者福祉法についての厚生労働省案が示されました。既にご承知のように、この厚生労働省案は、障害者が中心となってまとめた障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の骨格案がほとんど生かされてない内容になっていることから、多くの障害者団体が異議を唱えています。
 当協会では2月20日付で、全国の各友の会等地域団体へ向けて、この問題に対する全国盲ろう者協会のこれまでの取り組みについて説明すると共に、同会議における当協会福島理事の次の抗議声明を紹介しました。

(別添)
(2012年2月8日総合福祉部会での発言メモ・福島智)
 東京大学の福島智です。海外出張などで長らくご無沙汰してしまいました。申し訳ありません。およそ1年ぶりに帰国して、私は障害者制度改革をめぐる日本の状況の変化に、愕然としています。しばらく日本を離れていたことをたいへん心苦しく思いながらも、その立場を踏まえて、あえてお話しさせていただきます。
 みなさん、思い出してください。2009年の政権交代時の衆議院選挙で、民主党はマニフェストにおいて、「障害者自立支援法を廃止し、新たに障がい者総合福祉法を制定する」、と明言したことを。そして、政権交代が実現し、2009年12月には鳩山総理を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」が設置されたことを。その翌月、2010年1月には、先に提訴されていた「自立支援法違憲訴訟」において、政府・民主党は自立支援法の問題点を認め、原告・弁護団と「和解」にむけての「基本合意」を取り交わし、当時の長妻厚生労働大臣が合意文書に署名したことを。
 みなさん、思い出してください。その直後に障がい者制度改革推進会議が発足したときのあの熱気を。そして、同年4月にはこの「総合福祉部会」が設置されたことを。推進会議とこの総合福祉部会で、何十人という障害者やその関係者が、いったいどれだけ膨大な時間とエネルギーを費やして、議論を重ねてきたかを。そうして、昨年2011年8月には、この総合福祉部会の55人の構成メンバーの総意として、総合福祉法制定にむけての「骨格提言」を策定したことを。多くの傍聴者があり、ネットでの配信もありました。
 私たち自身の背後に、傍聴のみなさん、そして、ネットやさまざまなメディアで私たちの議論に注目してこられた方々がいったいどれだけの数おられたことか。
 こういう背景を踏まえたとき、「総合福祉法」は、この「骨格提言」の趣旨を最大限に反映したものでなければならないのは当然の流れだと思います。
 ところが、仮に名称は「総合福祉法」であったとしても、今の厚生労働省案では、実質的に「自立支援法の一定程度の改正」といわざるを得ない内容に留まっているのではないでしょうか。
 たとえば、「障害程度区分の見直し」について。「法の施行後5年を目途に、障害程度区分の在り方について検討を行い、必要な措置を講ずることとする規定を設ける」とありますが、結局これは、この問題を5年間先延ばしにすると言っているだけのことではないでしょうか。
 また、「地域生活支援事業の充実」という部分について。「地域生活支援事業として、地域社会における障害者に対する理解を深めるための普及啓発や、ボランティア活動を支援する事業を追加する」とあります。しかし、もともと現行の「地域生活支援事業」は、「自立支援給付」の10数分の1程度の予算規模しかありません。国の責任で進めるべき事業を、個人の自発的な活動である無償の「ボランティア」で補おうというのでしょうか。
 こうした「法案」を読んで感じることは、民主党の誠意の乏しさです。これは、信義を守ること、つまり「信義則」に反することと言わねばならないでしょう。昨年8月の「骨格提言」策定以後、いったい民主党は何をなさっていたのでしょうか。
 仮に総合福祉法の「骨格提言」の内容に全面的に沿った新法制定がすぐには実現できないのであれば、「骨格提言」のどことどこの部分なら実現できるのか。逆に、どこは実現できないのか。なぜできないのか。また、どうすれば実現できるのか。そして、いつごろまでに実現できるのか、といったことを、政府・民主党は一つ一つ丁寧に示すべきではないでしょうか。
 「骨格提言」を実現する上での最大のハードルは、厳しい財政状況を背景とした財源問題だといわれます。そして、その一方で、過去数年、こうした厳しい財政状況の下でも、障害関連予算は年々増加しているのだと指摘されます。しかしそれはニーズ増大に伴う予算の「自然増」であり、「自然増」はあくまでも「自然増」なので、実質的な「予算増」とは異なります。
 財政問題についていえば、民主党は「社会保障と税の一体改革」ということをさかんに主張していますが、その「社会保障改革」において、マニフェストに掲げていた「障害者制度改革」がどのように位置づけられているのか、まったく分かりません。 政治的発言力が小さく、相対的に弱い立場におかれがちな障害者の問題は、無視・軽視してもよいということなのでしょうか。
 日本には法的に認定された障害者だけでも今、およそ750万人います。難病や発達障害などの方々も含めれば、1千万人を超えるでしょう。さらにご家族なども含めれば、障害のある当事者とその身近な人たちは、3千万人から4千万人、つまり、国民の3人から4人に1人が障害の当事者やそのご家族ということになります。こう考えると、けっして障害者問題は本来小さな問題ではないはずです。
 なにも、障害者だけを特別扱いにしてほしいというのではありません。道路を歩いたり、周囲の人と会話をしたり、トイレに行ったり、水を飲み、ごはんを食べ、酸素を呼吸する・・・、などの人間の生存のための最低限の行為、人間が尊厳をもってこの社会で生きていくうえで、絶対に必要なことが自力ではなかなか難しい人たちに対して、社会のみんなでお互いに支えあっていきましょうと要望しているだけです。弱い立場の人間を無視・軽視する社会は、やがて衰え、力をなくして滅びていくでしょう。
 逆に、たとえ人生でどのように困難な状態におかれ、辛い・苦しい状況におかれても、自分ひとりではないんだ、人としての尊厳をもって生きていける、社会のみんなで支えあって生きていけるんだ、ということが国民すべてに実感されれば、その安心感は、一人ひとりの生きる活力となり、それが合わさって社会全体の活性化につながるでしょう。
 民主党は、社会的に不利な立場にある人の味方であり、相対的に弱い立場におかれがちな人を応援するというメッセージを社会に発信して、そのことで3年前に政権をとったのではなかったのでしょうか。
 私たちすべての人間は、本来、おそらく人生において予期しなかった苦悩や悲しみ、辛さを体験する存在です。それは個人の力ではどうにも避けられないことです。国家と社会全体で互いに支えあうしかありません。私たち日本人は、こうした人と人との支えあいの大切さを、昨年の3月の大震災をとおして、象徴的な体験として改めて心に痛切に刻みこみました。
 民主党のみなさん、どうか政治家としての原点の志を、初心を思い出してください。マニフェストに掲げただけでなく、裁判所という公正な場での議論をとおして、「和解」が成立し、公式の文書に大臣が署名したことまでもが、もし、ないがしろにされてしまうのであれば、私たち国民は、いったい何を信じればよいのでしょうか。
 民主党のみなさんの、政治家としての誠意と魂にお願いします。政治への期待を繰り返し裏切られ、政治不信を通り越して、政治に絶望しかけている日本国民の一人としてお願いします。
 強く、お願いします。


義援金総額320万円を配布
〜東日本大震災被災各県の盲ろうの方へ〜
 東日本大震災で当協会へ寄せられた義援金は、3月31日現在で189の個人・団体から3,210,081円に上りました。これらの義援金は、まず6月に宮城、福島、岩手、茨城の被災4県の各友の会を通じて、64人の盲ろう者個人に配分したほか、希望に応じて補聴器の電池、携帯ラジオ、乾電池などを送るために使われました。その後、12月にも4県の友の会へ追加配分をするなどして、3月31日現在までに総額3,191,470円の義援金を配分しました。


「盲ろう者向け生活訓練等事業」
平成24年度も継続実施
〜地域での訓練のあり方を検証〜
 平成22年度より、埼玉県所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンターで実施されていた盲ろう者宿泊型生活訓練等モデル事業は、平成23年度末で終了しましたが、厚生労働省では、平成24年度以降も引き続きこの事業を実施し、本格的実施に向けた検討を続けることとしました。
 平成24年度は、全国盲ろう者協会が直接委託を受け、これまでに実施されたモデル事業の成果としてまとめられた生活訓練等マニュアルに基づいて、これを地域の友の会や施設等で実施し、検証する目的で行われます。
 とりあえずは、訓練施設を持っている友の会として、東京盲ろう者友の会の協力を得て、東京都内の盲ろう者を中心に訓練を実施します。訓練期間は9月から12月までの4ヶ月間、一人につきおおむね1ヶ月程度。東京都盲ろう者支援センターで生活訓練を受けながら、マンションで単身生活を送り、体験型プログラムを経験します。
 この事業は、盲ろう者のためのリハビリテーションセンターを作ってほしいという、当協会や盲ろう者の声を受け、平成21年9月に国が勉強会を開いたことから始まりました。平成22年10月から平成23年9月には、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて実際に訓練が行われ、その成果は生活訓練等マニュアルとしてまとめられる予定になっています。訓練のポイントは、「盲ろう者を孤立させない訓練」にあり、訓練中や訓練以外の生活の場面で、通訳・介助員をどのように配置するかを検証することにあります。平成23年度までのモデル事業では、訓練時間中のみならず、余暇時間、日曜・祭日、夜間のすべてに通訳・介助員を配置して行われました。今回の訓練では、夜間については通訳・介助員を配置せず、盲ろう者が単身で生活するためにはどのような配慮が必要かを検証していきます。


第21回全国盲ろう者大会
〜愛媛県松山市で開催〜
 東日本大震災のため中止となっていた第21回全国盲ろう者大会は、本年8月3日(金)から6日(月)の4日間、愛媛県松山市で開催されることになりました。昨年の中止決定以後、今年度の開催に向けて候補地の選定を進めていましたが、なかなか決まらないため、全国盲ろう者団体連絡協議会が発案して、以後各ブロックで輪番制で開催していくことになりました。その最初の開催地として、NPO法人えひめ盲ろう者友の会が名乗りを上げ、開催が決まったものです。以後、平成25年度は関東・甲信越地区、平成26年度は近畿地区が担当することになっています。今年度の開催地は次の通りです。
 日時 平成24年8月3日(金)〜6日(月)
 場所 愛媛県県民文化会館(ひめぎんホール)
(〒790-0843)愛媛県松山市道後町2−5−1
電話 089-923-5111  FAX 089-923-5112
 会場の「ひめぎんホール」は、有名な道後温泉の近くです。松山市内には大きなホテルがないため、宿泊は近くのビジネスホテル等に分散することになります。「アッシャー症候群」や「頸肩腕症候群」の問題など、懸案であったテーマについても分科会が持たれる予定です。


新企画・ニューリーダー育成研修会
〜盲ろう者友の会活性化のために〜
 当協会の新しい企画である「全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会」の第1回研修会が、12月10日(土)〜11日(日)の2日間、東京・新橋の「301新橋ビル」で行われました。これは、独立行政法人福祉医療機構の助成によって実現したもので、全国の各友の会の新しいリーダーを育成する目的で開かれたものです。
 現在、わが国では障害者権利条約の批准に向けて、障害者制度の見直しが進んでいます。そうした動きの中で、大きく叫ばれていることの一つに「障害者を抜きにして障害者のことを決めない」ということがあります。障害者自身が主体となって、これからの障害者問題を解決していこうという流れです。盲ろうの世界もこうした動きに応えていく体制を作らなければ、様々な行政の動きについていくことができません。一方、全国の友の会の実状を見ますと、組織を引っ張っていく盲ろう者の人数があまりにも少なく、限られた人が様々な条件と戦いながら活動しているのが現状です。もう少し、盲ろう当事者のリーダーが増えないと、盲ろうの世界だけ、世の中の動きについていけないということになってしまいかねないという思いから、この研修会は企画されました。
 企画委員会は、比較的若い盲ろう当事者で構成され、当日の研修会では、全国盲ろう者団体連絡協議会の役員を中心とするベテランの人たちが講師を務めました。


大阪府が利用条件を大幅改善
〜通訳・介助員派遣事業〜
 大阪府では、平成24年度から盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業について、利用条件を改善すると発表しました。これによると、年間の利用時間はこれまでの750時間から1,080時間にアップし、1日の利用時間もこれまで8時間が上限であったものを、上限なしとすることになりました。通訳・介助員に支払う謝金単価は、これまでの1時間当たり1,100円から1,450円となります。大阪盲ろう者友の会による、粘り強い交渉が実ったものと言えます。


会費納入のお願い
 皆様からお寄せいただく賛助会費や寄付金によって当協会は運営されております。皆様のお志に深く感謝申し上げます。
 厚かましいお願いで恐縮ですが、平成24年度の会費をお納めいただきたく振込用紙を同封させていただきました。
 当協会の会計年度は4月1日から3月31日となっていますので、本年4月1日以降にお振り込み頂きました会費が、今年度分となります。したがいまして、本年4月以降に既にお納め頂いている方には振替用紙を同封しておりません。万一行き違いがありましたら失礼の段はお許し下さい。
 なお、例年団体賛助会費をお納め頂いている法人には、大変失礼ながら、請求書を同封させて頂きました。これも厚かましいお願いですが、よろしくお取りはからいいただきますようお願い申し上げます。

 個人賛助会費  1口 年 3,000円
 団体賛助会費  1口 年50,000円

 口座名  社会福祉法人全国盲ろう者協会
 郵便振替口座  00190−7−32546
 銀行口座  三菱東京UFJ銀行 神保町支店 普通預金 2190735


編集後記
 東日本大震災をきっかけとして、当協会事務所は千代田区神保町から新宿区早稲田町(ワセダマチ)に引っ越しました。部屋も広く明るくなりました。来やすいせいか、事務所を訪れる人も増えたような気がします。(塩谷)
----------
橋間信市(Hashima Shin'ichi)
e-mail: hashima@jdba.or.jp

社会福祉法人全国盲ろう者協会
〒162-0042
東京都新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階
tel: 03-5287-1140
fax: 03-5287-1141

(8月1日より事務所が上記に移転しました)

[先月] [目次] [来月] [最新版] [トップ]

感想メールはこちらへお願いします
Akiary v.0.51