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2010年5月17日(月) 常陽リビング掲載記事(2010/5/15)

  盲ろう者と社会をつなぐ「指点字」
   取手市の指点字サークル

 視力と聴力を失った盲ろう者がコミュニケーションする手段の一つ「指点字」を学び、地域に広げるサークルが取手市にある。その名も「指点字サークル」の代表を務める安藤千代子さん(72)は、がんや腫瘍で何度も手術を繰り返し、その後遺症で聴力を失い視力もわずかに残るだけ。暗闇に置き去りにされるような人生に一時は絶望したが、指点字を知って生きる希望を見いだした。

 「指点字サークル」のメンバーは現在約10人で、それぞれ手話や点字を習得している。毎週火曜の午前10時から藤代駅前の取手市民活動支援センターで例会を開き、指点字の勉強と雑談で2時間が過ぎる。「雑談だけで終わることもあります。私たちにはこうしたコミュニケーションの場が何よりも大切なんです」と安藤千代子さん。
 千代子さんが聴力を失ったのは55歳の時。せき髄を走る中枢神経にできた17センチもの腫瘍を取り除いた手術の後遺症で、下半身にも障書が残り「一生歩けない」と宣告された。30代後半から子宮がんや乳がんも患い、たび重なる病に生きる気力も失せ、うつ状態に陥り気持ちが持ち直すまで数年かかった。それでも、社会とかかわりながら誰かの役に立ちたいとの思いは消えず「残りの人生を生きるために人とコミュニケーションできる手段の必要性を痛感した」。懸命なリハビリで少しずつ歩けるようになると市の手話講座や二つの手話サークルに通い、必死で習得。しかし、67歳の時にラトケのう胞という脳の病気の手術で視野障害が残った。「いずれ視力も失うかもしれない」と、今度は盲ろう者の交流会「茨城盲ろう者の集い」に参加。そこで出合ったのが指点字だった。
 指点字は、目も耳もまったく機能しない全盲ろう者でありながら世界で初めて大学教員になった東京大学教授・福島智さん(47)の母が、福島さんが聴覚を失った18歳の時に考案し、盲ろう者の間で広まっている。会話する相手の左右の人さし指・中指・薬指を点字タイプライターのキーに見立てて「トン、トン、トン」と指でたたき言葉を伝える。特別な道具は必要なく慣れればかなりのスピードで会話ができ、細かいニュアンスまで正確に伝えられるのが特徴。指と指の触れ合いで心の通った会話ができる指点字に「これだ」と思った千代子さんは、同集いの参加者で視覚障害者の点訳ボランティアを務める利根町在住の新保敬三さんに手ほどきを受け、地域にも広めたいと二人で06年にサークルを発足。そこに千代子さんの仲間の三宅眞梨子さんや浜口裕子さん、竹内雅美さん、平塚智徳さん、桜井美代子さんなどが加わり、盲ろう者の安藤たみ子さんも参加。外出の機会が増え、悩みを打ち明けたり元気になれる」と週に1度の例会を楽しみにしている。第2・4火曜は取手市役所敷地内の福祉交流センターでも勉強会を開き、指点字の輪は少しずつ拡大。誰でも気軽に参加できるよう参加費や会費は無料。08年には盲ろう者の集いが発展して「茨城盲ろう者友の会」が発足し、二代目会長として奮闘する千代子さんをサークルメンバーがサポートしている。
 盲ろう者の中には全盲ろうの人もいれば、目は少し見えるが耳はまったく聞こえない人、逆に目はまったく見えないが耳は少し聞こえるなど、聞こえ方や見え方の程度、障害の程度はさまざま。いずれにしても誰かのサポートなしには会話や外出、情報入手などが極めて困難なため家に閉じこもる人も多い。現在、明らかにされている盲ろう者の数は全国に約2万人、本県では約500人と推計されているが、実数は把握できていない。「高齢化に伴って盲ろう者は増えるでしょう。でも、健常者だった人が60歳を過ぎて視力と聴力を失い手話や点字を覚えるのは大変です。盲ろう者はもちろんボランティアの方も親睦を深めながら共に学びませんか」と千代子さん。
 手話や指点字を勉強して人とつながり生きがいを持てた自分のように、盲ろう者がいつまでも生き生き暮らせるよう少しでも力になれればと、会の活動を広げていく。問い合わせ 電話0297(68)5998/新保さん(藤代会場)、電話0297(78)9753/川中さん(取手会場)

 校正者注:写真が2枚あります。“指点字サークルのメンバー。前列右から安藤千代子さん、安藤たみ子さん、竹内さん、後列右から平塚さん、三宅さん、浜口さん、桜井さん、新保さん” “手を重ねて指の温もりも伝わる指点字。左の人さし指を打つと「あ」の意味”

2010年5月17日(月) 


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